文化財詳細
日本美術・文化を世界へ紹介
文化財区分:
書籍・典籍・古文書、絵画・書
時代区分:
明治時代、明治後期
指定区分:
指定・登録なし
収蔵場所:
八戸クリニック街かどミュージアム
『Histoire de l’ art du Japon(日本美術史)』は、明治33(1900)年のパリ万博において各国要人や研究者に配布された日本最初の官製美術史で、その原稿をもとに後に出版された日本語版・普及版は明治・大正を通じ日本美術史の教本となった。美術史の形成は、国の歴史観・国家観にかかわり、近代国家の威信をかけた事業といえ、本書は帝国博物館による長年の調査をもとに岡倉天心(おかくらてんしん)が中心となり編纂され、図版には、美術研究誌『国華』などで築き上げた豪華な多色摺木版複製画と小川一真(おがわかずまさ)のコロタイプ写真が掲載された。
また、『LE JAPON ARTISTIQUE(芸術の日本)』は、明治21~24(1891)年にパリの美術商で当時のヨーロッパの日本美術ブームを牽引したサミュエル・ビングが創刊した芸術雑誌。日本美術の模倣品や粗悪品の横行を危惧し、日本美術への真の理解を啓蒙教化するため、浮世絵や工芸品だけでなく、建築・和歌・歌舞伎など幅広い日本文化に関する論文やエッセイが掲載されている。特に日本人の自然に対する眼差しや造形表現が讃えられ、ビングの店名がつけられヨーロッパに花開いた「アールヌーボー〔新しい芸術〕」に影響を与えた。
ともに19世紀後半~20世紀初頭における日本美術・文化の発信と受容に関する一資料である。
解説執筆者 : 八戸クリニック街かどミュージアム 小倉 学
推薦文献 : ①佐藤道信 1999『明治国家と近代美術』吉川弘文館 ②岩切信一郎 2009『明治版画史』吉川弘文館