文化財詳細
日清戦争
文化財区分:
絵画・書
時代区分:
明治時代、明治後期
指定区分:
指定・登録なし
収蔵場所:
八戸クリニック街かどミュージアム
作者:
右田年英、水野年方、尾形月耕、小林清親
明治27(1894)年7月から翌年4月まで行われた日清戦争は、明治20年代に衰退期を迎えていた浮世絵市場に活況をもたらし、3枚組だけでも300点程刊行された。西南戦争錦絵に比べ浮世絵風の表現は減少し淡い色調が増え、西洋画の様式を取り入れ発展する近代日本画黎明期の肉筆画〔特に歴史画〕の影響を受けた作風が多い。
「大孤山沖海軍之激戦」は、黄海沖で近代的装甲艦が投入された日清戦争最大の海戦をダイナミックに、「於威海衛附近我海軍陸戦隊決死隊七勇士先鋒上陸之図」では威海衛(いかいえい)攻略に向け上陸する7人の偵察隊の勇姿が描かれ、「大日本帝国万々歳成歓襲撃和軍大捷之図」の右下には、国民新聞社派遣の画家久保田米僊(くぼたべいせん)・金僊(きんせん)親子と記者の姿が、「霊鷹奉献之図」では軍艦高千穂のマストに舞い降りた鷹を明治天皇へ献上した逸話が画題にされている。
また、若手の作品が多い中、光と影を効果的に用いた「光線画」で人気を博した小林清親(1847‐1915)の「平壌激戦我軍大勝利之図」などの作品は、静寂かつドラマティックな光景が印象的で異彩を放っている。
多くの浮世絵が描かれた一方、日清戦争は、写真や石版画が活況を呈する機会ともなり、この一時的な盛況も浮世絵市場の衰退を止めることは出来なかった。
解説執筆者 : 八戸クリニック街かどミュージアム 小倉 学