八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club
この本・この資料 明治・大正・昭和・平成〜「文學の國いわて」
道又力著
第一章「明治篇」の「国語元年」 から読者へ強いアピール。タイトルから「ああ、井上ひさし」のーと推しはかれる。戯曲で明治の初め「国語元年」を面白く描き、国語統一の必要性を説く場面で南部・遠野弁を登場させる。ひさしは八戸や一関、 釜石市に一時期暮らした。
第五章「昭和戦後篇」で芥川賞作家、三浦哲郎作「忍ぶ川」を紹介。 作家を目指し東京暮らしの三浦の作品は花開かず。身重の妻と都落ちした日が今上天皇(当時の皇太子)ご成婚パレードの日である。母や姉が暮らす一戸町から再起をかけ上京、 執筆したのが「忍ぶ川」だ。文中には早稲田大政経学部で同期だった馬場勝行氏(元岩手日報社取締役)も登場、一戸町の忍ぶ川文学碑前での写真が2人の親交ぶりを伝える。
このほか石川啄木、宮沢賢治、高村光太郎、野村胡堂、渡辺喜恵子、 三好京三、高橋克彦、中津文彦、佐藤亜有子ら文壇、文学界を沸かせた作家たちの登場。芥川賞や直木賞、 H氏賞など各ジャンルで活躍した明治以降の岩手の先人作家、詩人らは多彩で業績もまぶしい。著者の道又力は昭和36年、遠野市生まれの脚本家で盛岡市在住。6百ページを超す著書だが脚本タッチの描写など読みやすく、作品、書名等の索引はうれしい。岩手日報朝刊で東日本大震災以後の2013年1月から週一、3年9カ月、191回連載されたものへ加筆した。625㌻、3700円+税、岩手日報社刊。