八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

この本・この資料 絵本『ハナミズキのみち』

文・浅沼ミキ子 絵・黒井 健

 東日本大震災は大津波を呼んだ。 絵本の文を描いた浅沼さんも長男の健さんを亡くした。場所は陸前高田市。その悲しみを乗り越えようと2年の歳月をかけ、言葉を紡いだ。

 大すきな町 大すきなけしき。 山の上から 町を見おろすと、松原のむこうに 海がきらきらと・・・

 大好きな家族が暮らした街。そこへ無情にも津波が襲う。大判の絵本6ページにたった1行 あのとき・・・ と書かれるだけ。あとは電柱が揺れ、 電線が切れ、舟や家がさらわれ、一本の松の木が残る。お母さんを呼ぶ声、でも、その声がだんだん「悲しまないで。楽しかったことを思い出して。僕はここから見ているから」に変わる。さらには「大好きだったハナミズキの木をたくさん植え、ハナミズキの道をつくってね」との声に・・・。ハナミズキの道は二度と悲しみを起こさないための道標なのだ。

 NHKなどでも紹介され、涙なしでは読めない絵本。絵を添えたのは絵本や童話のイラストレーターで川崎市在住の黒井健さん。

29㌻、1300円+税。金の星社刊。