八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

この本・この資料 藤木俱子句集「無礙(むげ)の空」

藤木俱子

 「新緑や風が運べる杣ことば」

 時はいま新緑の候だが、この句の前に(迷ヶ平)とある。岳がある新郷村はその昔、「春木流し」という山仕事があった。杣夫たちが冬に切った薪を雪融けで水かさが増した川へ流し、下流で陸揚げする。いまでは「杣」という字すら時代的な響きだ。しかし、著者が吟行でその原風景、風物詩を見事に捉えた一句。

 著者は周知の通り八戸で俳誌「たかんな」を創刊し結社の主宰。当クラブの会員でもある。『清韻』に続く第9句集で2百句採録。東奥文芸叢書で東奥日報社刊。132㌻、1200円+税