八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club
この本・この資料『安藤昌益の痛快漢字解〈私制字書巻〉を愉しむ』
吉田德壽著
江戸中期に『自然真営道』を著し、 日本屈指の思想家とされる安藤昌益は八戸で15年、開業医として活躍した。ところが思想、理論は難解さが目に付く。その一つが「私制字書巻」。 5千字に及ぶ字源辞書だが漢字や熟語に繰り返しや独創的な記述、造字や絵文字に戸惑う読者も多い。
この難解さに挑んだのが「安藤昌益の痛快漢字解―『私制字書巻』を愉しむ」だ。挙げれば「計」の字。 昌益は「ひと、ひと、ふた、ふた」 と言いながら十まで数え上げる意ーとした。著者は八戸出身の芥川賞作家・三浦哲郎の「鰯たちよ」に同じ描写があり、これは昌益が八戸で同様の魚さばきをみて説いたのではーと思いを広げる。「香」の字なども米やご飯に及ぶ含蓄ある解釈が面白い。
著者はデーリー東北新聞社時代 「米」2百回連載で黒柳徹子さんと共に新評賞を受賞。昌益に関しては東奥日報社編集委員時代に出版した『安藤昌益ー直耕思想いま再び』に続く2冊目。当クラブ代表で日本ペンクラブ会員など。農山漁村文化協会刊。187㌻、1800円+税