八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club
会員投稿「安田コレクション」映画に登場
安田勝寿
安田コレクション(昔の玩具等)は映画「20世紀少年」に関わる運命にあったのか?
この映画を簡単に説明すると、主演唐沢寿明、常盤貴子、豊川悦司。総制作費六十億円。全三部作。キャストが三百人と邦画史上最高を誇る超話題作です。世界でも二十カ国以上で上映されました。
一年前に、映圉会社の東宝さんから懐かしい小道具の貸出し選考のオファーがあった際、頂いたリストを見て驚いた。なんと八割近くを所有していたからだ。
オファーをお願いした名前を聞くと日本を代表するような収集家の名前ばかり、その中で私が一番若い。まさか全面的に映画に関われるとは思わなかった。
最終的に私のコレクションを中心に、足りない物をおもちゃメーカーさんと老舗のおもちゃ博物館から借りて撮影することになった。
選考理由は、ジャンルの広さとおもちゃのコンディションの良さである。コレクターは好きな物を突き詰めて集める方が多いのですが、私は違います。興味がなくてもとりあえず何でも買い揃える手法をとってきた。そうすると広範囲に渡るジャンルのコレクションができる。
今回そうした収集方法が、この映画の思惑に合致したのだ。映画に映る小道具を予測して集めたと思わせるような縁を感じた。
しかし、正式に関わることが決まってからが悪戦苦闘だった。監督の本物を使いたいという熱い思い。一万点近い小道具は、数十の倉庫に分けられて保管されているので探し出すのに苦労した。一念発起し、ダンボールと格闘。展示品は直ぐ思い出すことができたので簡単に探せる。その他が大変である。
一ヶ月かけてほぼ見つけることができた。あとは、時代考証と版権問題のクリアーだ。色々の角度から調べたので勉強になる。満を持して劇中の昭和四十年代の駄菓子屋での回想シーンと、おもちゃ博物館のセットに使われるブリキのおもちゃ等約二百点近くを映画に提供した。小道具達に想いこめて、全部当時物の本物です。映画シーンには登場しないが、全く見えないところにも大量に小道具が使われている。袋入りの女の子の人形、マジックシール、ピストルセット。
スタッフいわく、画面には映らないが演じる役者さんにはその小道具たちが目に入っているので、感情移入が出来るのだと。一見無駄な作業に思えるが、映画の奥深さを知った気がする。
殆ど気が付かないと思われるが、エイジングも施されている。四十年代の雰囲気を出すため、ホーロー看板に汚しや錆を施していた。劇中注視しても殆どわからない世界にもこだわる。これが堤監督のスタイリッシュでマクロな演出なのだ。
今回の映画は邦画史上最高の話題作だと思っている。映画化不能と言われたプロジェクトに挑む関係者の意気込み、徹底的に情報を隠し、神秘性を高めることに成功した制作サイドの思惑。日本テレビが社運をかけた映画ならではのあらゆる媒体を使った宣伝戦略。ハリウッドの「オーシャンズ13」を彷彿させる豪華なキャスティング。堤監督の原作にこだわった演出方法。普通の人間が悪に立ち向かうストーリーに、わくわく感と好感がもてる。
私も今年で四十歳になるが、体の半分以上が二十世紀でできているので、昭和時代の場面が無上に懐かしい。近所の林や原っぱに作った秘密基地、エッチな雑誌をどきどきしながら仲間たちと読んだものである。
学校にまつわる怪談話。変速ギア付きの自転車。近所に必ずあった古ぼけた駄菓子屋。そして必ずいる怖いオバちゃん。憧れの大阪万博。すべての小ネタが新鮮であり共感がもてる。
私も映画のワンシーンのような実体験があるので共感を覚える。子供から大人まで楽しめる新時代の映画が登場。必ず第二部、第三部と見たくなる映画です。
一月三十一日にジャスコ内の映画館で上映が始まりますので、是非ご覧になってください。安田勝寿コレクションとエンドロールにも名前が出ますので。
最後に全三部作に関われて光栄です。誇りを胸に、一層の蒐集・研究に邁進して参りたいと思います。