八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

特別原稿『墓獅子』掛唄

インヨウホー 東方はヤア薬師の浄土の玉の御構ヤ

君が開かて誰か開こふ〜ヨ〜ヤーハー

インヨウホー 西方はヤア弥陀の浄土の玉の御構ヤ

君が開かて誰か開こふ〜ヨ〜ヤーハー

インヨウホー 南方はヤア観音菩薩の玉の御構ヤ

君が開かて誰か開こふ〜ヨ〜ヤーハー

インヨウホー 北方はヤア釈迦の浄土の玉の御構ヤ

君が開かて誰か開こふ〜ヨ〜ヤーハー

インヨウホー 中央はヤア大日大悲の玉の御構ヤ

君が開かて誰か開こふ〜ヨ〜ヤーハー

インヨウホー 茶の木にはヤアいかなる木の葉を取り揃えヤ

天から落ちる玉の水かな〜ヤーハー

インヨウホー 桜木をヤア打ち割り見れば何もなしヤ

花の種とは何を言ふらん〜ヤーハー

インヨウホー 白銀をヤア柄杓に曲げて水を汲むヤ

水をば汲まぬ白湯をこそ汲む〜ヤーハー

インヨウホー 酒呑まばヤア多くは呑むな少し呑めヤ

高天原の色に出るもの〜ヤーハー

インヨウホー 恋しさに〜恋しき人の墓見ればヤ

涙で書いた石の卒塔婆よ〜ヤーハー

インヨウホー 恋しさに〜我が古里を来て見ればヤ

変わらぬものは森と林よ〜ヤーハー

インヨウホー 恋しさに〜恋しき人を来て見ればヤ

見るよりはやくしぼる袖かな〜ヤーハー

インヨウホー 立つときはヤア我れ壱人とは思ひどもヤ

死出の参途は連れが多くぞ〜ヤーハー

インヨウホー 闇の夜にヤア啼かむからすの声聞けばヤ

生まれぬ先の父ぞ恋しき母ぞ恋しき〜ヤーハー

インヨウホー 極楽のヤア末木の枝には何がなるヤ

南無阿弥陀仏の六つの字がなる〜ヤーハー

インヨウホー 我が親はヤアいかなる悪非に我れをなすヤ

親をば問わぬ親に問わるる〜ヤーハー

インヨウホー 西見ればヤア紫雲はたなびきてヤ

違ひなくは弥陀の浄土に 弥陀の浄土に〜ヤーハー

○『墓獅子』掛唄の掲載に当たって

 昨年11月13日に開いた「方言ラヴ・ トーク」で柾谷伸夫当クラブ参与がこの掛唄を朗詠し聴講者へ深い感銘を与えた(会報88号参照)。ことしもラヴ・トークを開くが、願わくは旧盆の8月14日、15日に鮫の墓地で演じられる先祖供養の「墓獅子」を体験したいもの。掛唄は貴重な文化遺産とし柾谷さん監修の下、当クラブ会報に全文採録した。(写真は2016年8月、柾谷伸夫さん撮影)