八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

この本・この資料「現代八戸の歴史と経済・文化の展望』~工藤欣一著作集 上・下巻

三浦忠司編

 著作集に冠される工藤欣一の名を八戸や近郊で知らない人はいないだろうが、あえて記述しよう。 1932年、八戸市に生まれ八戸高校から東京大学経済学部へ。ネタツさんで親しまれた工藤辰四郎商店の専務から社長に。

 経済界に留まらず、八戸市民オペラ協会長、市民フィル交響楽団会長、 青森大学客員教授、八戸大学総合研究所教授など幅広く活躍。2005年5月8日、死去された。

 著書はその人柄や業績を遺そうと八戸歴史研究会会長を引き継いだ三浦忠司氏らが中心になって編んだ。

 上巻は研究論考編。編纂記念誌には「八戸港史」、「八戸市議会史」など。産業論考では「八戸市産業構造の変化」など工藤理論を採録。

 この巻で特筆は第4章「歴史と安藤昌益」。安藤昌益の思想に傾倒し、 1200人もの参加者で斯界、研究者らを驚かせた昌益国際フェステバルの成功など実行委員長としての工藤像も偲べる。

 文化芸術編の下巻もまた質量感で読む者に迫る。発表当初、読者を二ンマリさせた「ケタクソ悪いページ」の提言はいま再見しても痛快。この後に続く生の文化論考を聴けないのが無常で、寂しい。

 工藤欣一著作集刊行会・刊 上巻428㌻、下巻447㌻で合本しケース入り。 定価10,000円