八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

会員投稿 同志トムさんを偲ぶ

田中麗子

 三浦福壽さん、ふくじゅさん、そして、トムさん!

 貴方が昇天されたこと、残念で残念で、悔しくて仕方がありません。

 目の前にある遺影のトムさんが消えてしまったとはどうしても思えなくて・・・。ふと振り返ると、いつもコニコと静かに傍に居てくれた、そんな優しいちょっとシャイな、トムさんでした。

 初めてお逢いしたのは、四十年以上も前になりますね。

 木村書店の支店が三日町の角にあった時代です。その二階で「サンフラワー」という喫茶室をオープンしたのです。

 当時、変わり者が集まる店?と言われましたが演劇仲間や新聞社仲間、 高専のバイト仲間、デザイナーや画家など奇々怪々風な仲間達が集まるようになりました。でも、余り売上げが良くないことを心配して、色々な企画を考えてくれるようになったのです。“詩の朗読会”や“ギターの弾き語り”、寸劇的「不思議な国のアリス」のファッションショーなどは画期的でした。お金はないけれど活きるエネルギーを爆発させたい仲間達で「俺たちの会」をもじって「レオの会」とか名付けたりして ・・・。あの時から文化サロン的活動のスタートになったと、後になって貴方は話して下さいました。

 そして、トムさんとの一番鮮明な思い出は、未だ水道、トイレ設備の無かった白浜での夏のキャンプをしたときです。トムさんが、砂浜に大きな穴を掘って円形に座れるスタンド式ベンチを作ってくれたのです。 夜にはそこでキャンプファイアを焚き、恋愛を語り、ベ平連や安保論争など議論し、流行のフォークソングを歌う。昼の炎天下では、砂に点棒を刺し麻雀に興ずる者、海辺ではしゃぐ者、読書や空想に耽る者あり・・・と!。そして、キャンプテントからそれぞれの職場に学校に出勤、通学・・・。

 常識をぶち壊すべく非日常を求めた若き日の違い思い出です。

 そのころトムさんはイラストレーターとして、「おとぎのこばこ」「八戸これは巷の話でございあんす」など出版物の挿し絵や装丁のお仕事で活躍されていました。私はその後しばらく八戸を離れてしまったのですが、八戸に帰ってきて、トムさんの優しい温かい人柄が数々の作品に現れていることを知りました。デーリー東北の「えんぶり・今昔道具考」、 三社大祭・三社行列のイラスト、自作の「鮫の散歩道」や、童話「一日おくれのクリスマス」など、地元著名人の著書の装丁や挿し絵の数々は、 職人的技法の凄さはもちろん、広く深い知識の積み重ねの結晶であると思いました。八戸にとっても私たちにとっても貴重な人材を失った事は無念です・・・。

 心のこもった素晴らしい作品を私たちに残して下さった三浦福壽さん!

 貴方を支えて下さった素晴らしい奥様と素敵なお嬢さん達ご家族の絆は、トムさんの自然体な生き方の最高傑作を表していると思えてなりません。

 最後に、愛称(ペンネーム?」「トムさん」の名を私は勝手に「夢を吐く人」と思い込んでいます。お聞きしないままお別れしてしまいました。 寂しいです・・・吐夢さん!

 先に逝っている、よっちゃん(鈴木芳雄)や、とめさん(北村篤)たち、そして豊島和子先生、小寺先生にもよろしくお伝えくださいね! 駄洒落も好きだった吐夢さん!又そのうちに逢いましょう!

 さようなら・・・。

八戸ペンクラブ会員、三浦福壽さんは8月31日逝去されました。

(八戸ペンクラブ理事)