八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club
この本・この資料「青春の日記」~三浦哲郎のこと
竹岡準之助著
いささか時代がかった表現だが、 刎頚の交わりーとはこういう友だちのことか。60年以上も前、大学時代の文学仲間であった三浦哲郎さんを偲んで本を出す。しかも男同士の交流を綴るなどし、今春からたて続け関連書4冊の出版である。
〈五月十六日 朝、八時半頃、青雲寮に三浦を訪ねる。まだ眠っていたが、寝返りを打った機会に起こす。 垣間見たところ、習作原稿など書きつけて張り切っている。駒込から高田馬場へ一緒に出て、登校)・・・。
この日の書き出しは男女の恋情を思わせるほど。昭和二十八(一九五三)年といえば四月、三浦哲郎は二十二歳、作家を志し、早稲田大学仏文科へ再入学、小説の習作などを始めた―とする三浦年表と符合する。
著者の竹岡さんは言わずと早大時代、三浦さんと同期で同人誌「非情」仲間。このコーナーで「古塔の街」ほかを相次いで刊行―と紹介済み(会報65号)。2人の交遊ぶりは知る人ぞ・・・で、今夏、青森近代文学館が開催した「三浦哲郎」特別展にも竹岡さんが“未公開”写真などを協力開陳、話題を呼んだ。
この日記には三浦さん出世作「忍ぶ川」のヒロインとの出会い、恋愛進行を時にはハラハラしながら覗く描写もある。大学での出会いから同人仲間の思考、芥川賞受賞までの三浦さんへスポットを当て、綴るまさに三浦文学創生記。三浦文学ファンらにとって見逃せない一冊。
幻戲書房刊、定価2200円+税