八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club
沖縄戦跡・基地めぐり
高橋眞理子
突然空から「ゴォー」という音が近づいて来たかと思うと、建物の間から現れた真っ黒な機体。あまりの速さと視界距離の近さに唖然とした。 つぎの瞬間、からだ全体が衝撃を感ずるほどの轟音に我に返った。つづいて2機、3機。さらに別な方角から現れたF15ジェット戦闘機は、 目の前を急角度で旋廻し、あっという間に視線から消えていった。 嘉手納基地周辺の住宅が密集する地域に、この衝撃的な光景がほぼ毎日のように繰り返されているという。 沖縄旅行の最終日、三月二十八日の朝の出来事である。 沖縄には二度目の旅行である。前回は職場の観光旅行だったこともあり、「ひめゆりの塔」には行けなかったが、今回はしっかり巡る事が出来た。しかし出発する前に、沖縄の戦争体験・戦争跡をめぐるこの旅行は、 その忌まわしい記憶から早く逃れたいと思っている沖縄の人にとって、 果たして歓迎される事なのかという、 不安と疑問があった。 しかも沖縄在住の若者に会う機会があり「オスプレイは大変でしょう?」と質問したところ、「基地の側だけですよ。俺たちの住むところは何も」という答えに、基地問題への温度差を感じない訳にはいかなかった。 行く前に、少しでも沖縄に関する知識を得たいと読んだ本がある。小林よしのり氏の「沖縄論」(小学館) である。太平洋戦争の戦場となり、 日本に復帰しながら、今なお基地に財政依存せざるを得ず、基地反対という一枚岩で成り立たない。複雑な感情を抱き続ける「沖縄」を、伝えている。世界情勢からも基地を返還するなら、日本も自衛すべきだと。それが現実だと。 でも私が見たものは、奇跡的に「ひめゆり部隊」で生き残った島袋さんの、戦争の悲惨な体験を二度と子供たちにさせてはならないという強い姿であり、自然を破壊していく沖縄の基地建設に6000日近い反対の座り込み等を続けている地元有志の姿であった。沖縄で起きた事、いま現在、起きている事は、日本と言う主権をもつ国の在り方にも深く関わっていると説明する琉球大学山内先生の、平和への揺るがない熱い思いだった。私たちこれからも多くの情報を受け取るだろうが、誰の言葉を信じ、誰の意思を受け継いでいくべきかを明確にしてくれた、新しい出会いの沖縄の旅だった。 (会員)