八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

安藤昌益資料館開館10周年記念シンポジウム「昌益とジェンダー思想」を大会テーマに

滝尻善英

 八戸ペンクラブの友好団体である「安藤昌益資料館を育てる会(根城秀峰会長)」は10月12日、同市十六日町の天聖寺ホールで、資料館開館10周年記念シンポジウムを開いた。

 今回のテーマは「昌益とジェンダー思想」。当日は台風19号の接近ということもあったが、悪天候のなか40名ほどの参加者があり、現代にも通じる昌益のジェンダー思想について理解を深めた。

 安藤昌益の名前は高校日本史の教科書に「江戸時代の八戸の思想家」 として登場し、唯一、八戸の名を目にする大学入試センター試験ではなじみの重要人物。

 昌益の思想は、万人が農業に従事 (直耕)し、男女別なく働く姿こそ 「自然世」であると徹底した平等を主張している。さらに「男女」と書いて「ヒト」と読ませ、「人は男女にして人なり」と論じている。今でいうジェンダーフリーの先取りがその主著『自然真営道』や『統道真伝』 に紹介されている。

 同館育てる会は平成21年(2009)10月に開館し、毎年シンポジウムを催している。今回は、平成4年 (1992) 10月の「昌益国際フェスティバルin八戸」のフロアゲストだった京都精華大学のレベッカ・ ジェニスン教授を講師に招いて開催。

 ジェンダー論を専門とするジェニスン教授は「世界の潮流〜昌益のジェンター平等思想」の演題で基調講演し、「開発・環境・人口問題を合わせ、 ジェンダーの視点から考える必要がある。ダイバーシティ(性別・人種に限らない多様性)を推進すべき」 と主張した。

 基調講演後の休憩タイムには混声合唱団・浜茄子エコー会による安藤睦夫作詞作曲の「風雪南部唄」が披露され、昌益に通じそうな「病める地球の脈をとる」歌詞が感動をよんだ。

 その後、八戸歴史研究会長三浦忠司氏をコーディネーターに、同会会員のおりかわかおる氏、八戸漁業指導協会長の熊谷拓治氏、そしてジェニスン教授によるパネルディスカッションを行った。

 少年期から昌益に関心を持っていたという熊谷氏は、「昌益は哲学者であると同時に科学者でもあった。 産婦人科の知識も会得していた」「昌益が目指した世の中は、男も女も全ての人が幸せに、“わぁも良ぐ、いがも良ぐ(八戸のハマの方言)”ということである」と発表した。

 ジェニスン教授は「平和であることによりジェンダーが保たれる。国際紛争の中では維持できない。」「男か女かという二つしかないわけではないという余格を持った考え方が必要」と唱えてシンポジウムを締めくくった。

 シンポジウム終了後、会場を八戸プラザホテルに移し懇親会を開催。30名ほどが円卓を囲んで、昌益との出会いを交え自己紹介したり、昌益をテーマに沿って交流を深めたりした。遠くは関東・関西からの参加者もおり、盛会裡に終了した。また、参加者には10年間のシンポジウムの内容をまとめた『資料館開館10周年記念冊子』が配付された。(副会長)