八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

この本・この史料 講話集『三浦哲郎とその文学』

森林康著

 教育者で著者の森林さんは自他ともに認める三浦文学の研究者。「日大文理学部教育学科へ編入学した」 努力家でもある。代用教員を辞め大学へ進むが小説家を目指し学部換えした三浦さんの軌跡にも似る。若い頃から三浦文学に執着した著者はやがてフアンらを前に三浦文学を語りその回数や「百回を超す」という。

 第一章では「逆境を乗り越えた三浦哲郎」に焦点。短篇名著『忍ぶ川』 に纏わることや三浦氏の出生秘話、 姉、兄たちの不幸な自滅、失踪などに悩み小説家に目覚め早大「非情」 仲間や井伏鱒二との親交を説く。

 第二章は「名作・名文に親しむ」 項として三浦文学の原点と精神、作品を解析する。挙げれば『忍ぶ川』 における志乃さんとの出会いから深川参りや金田一温泉、故郷への新婚旅行まで文体を「起」「承」「転」「結」 に分け名作を細やかに分析する。

 著者は昭和13 (1938)年生まれ。八戸高校、日大に学び同市や三戸郡の小学校に助教諭や教頭、校長として勤務。市教育長なども勤め現在は歌人で三浦文学顕彰協議会会長。

『三浦哲郎とその文学』は220㌻、私家版で400部発行。