八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club
会員寄稿 「三陸海岸国立公園」の旗揚げを!
堀徳郎
種差海岸国立公園への動きと課題
既に、市制施行の昭和初年、神田市長による十和田湖、奥入瀬渓流とともに国立公園へとの運動かあったが結局挫折した。
戦後の昭和四十年代にも、陸中海岸国立公園へ編入の動きをしたが、これも挫折している。
四十年後の昨年一月、八戸市で開かれた三陸沿岸都市会議において、今度は大船渡市の甘竹勝郎市長が八戸市の小林真市長に、陸前、陸中に陸奥の種差海岸が加われば名実ともに三陸となると国立公園指定を国に求めるよう促し、八戸市民は思いをあらたにしたのである。
そして十一月には「はちのへ小さな浜の会」が市内で勉強会を開き環境省神田修二国立公園課長を招いた。
課長は、国立公園選定の見直しの動きもあるので、種差単独の国立公園化はムリだが「陸中」に編入することの可能性とその意義を述べ、地元の意見の集約を求めている。
なお同会は新年度の事業計画にこれを研究課題にとりあげている。
市制八十周年となる今年二月十日には、第二十五回三陸沿岸都市会議が久慈市で開かれ、八戸市の奈良岡修一副市長は種差海岸の陸中への編入を検討すると述べている。
さらに四月には陸中海岸国立公園協会の総会が開かれ、名称を「三陸海岸国立公園」に変更する取り組みについて、八戸地域の国立公園編入の動きを支援する意向を固めた。ここには、「陸中」と「三陸」のイメージの差を克服し飛躍しようとの強い想いを感ずるのである。
当面の課題
陸中海岸から三陸海岸への拡大について八戸市当局の意見は、
①自然環境保護と開発との兼ね合い
②私有財産権の問題
③IT企業集積団地計画 など課題も多く相当時間がかかりそうだという感じであった。
しかし、種差海岸は既に、
一九三七年(昭一二)国の名勝指定
一九五三年(昭二八)青森県立自然公園
一九七四年(昭四九)種差海岸階上岳県立自然公園
となっている。
現在の自然公園での規制と国立公園での規制を明確に対比するとともに、陸中諸市は、どう解決してきたのかなどの研究について市当局尽力を期待したい。
ではそもそも、三陸海岸とはどこ
三陸海岸とは、『広辞苑』(第三版)では、青森県八戸市の鮫角(さめかく)から宮城県牡鹿牛島南端までのリアス式海岸としている。これについて一九〇七年版吉田束伍の地名辞書には[鮫埼 又鮫角といひ、八戸市街の東北二里に当たり]とある。
Yahooの辞書では、鮫角岬から牡鹿半島に至る海岸と書き、マイペディア百科辞典では、東北地方の太平洋側、青森県南東端から岩手県沿岸を経て宮城県の牡鹿半島までの海岸の総称で、世界三大漁場三陸沖で有名であると書いている。
旗揚げは「鮫ヶ崎」の名付けから
辞典のいう鮫角、鮫埼、鮫角岬、青森県南東端とは何を指しているのか。わがペンクラブとしては、先ず手始めにこの岬に「鮫ヶ崎」の名を正式な地名として登録し三陸海岸最北端の明快なランドマークとすることを提案したい。
この絵図は江戸時代正保の国絵図である。偶然出会ったこの絵図に「鮫ケ崎」の文字を発見した。これは一六四四年作成である。(鎖国令は一六三九年、八戸藩成立は一六六四年)
更に青森県立郷土館所蔵の「陸奥・出羽国行程全図にも「サメガサキ」の文字が見える。これは一八六八年明治元年の作である。
江戸時代を通じてこの岬が「鮫ヶ崎」とよばれていたことは明らかで、どなたも納得ではなかろうか。
名付けの作業にも、市当局、県当局のご尽力をお願いしたい。
国土地理院の地形図に記入してもらうためには、まず自治体の「地名調書」に記載する必要がある。関係自治体との協議も必要であろう。
蕪島神社の主神は弁財天です。
三陸海岸南端となる牡鹿半島の先端には金華山があり、全国五弁天といわれる弁天様が祀られている。
五弁天とは、安芸の宮烏、大和の天 河、近江の竹生島、相模の江ノ島、陸前の金華山である。 燕烏の弁財天は江戸時代以前から、航海、漁民の守り神として篤く信仰され藩主の代参も行われていた。またウミネコは弁天様のお使いとされ現在も市民とこれほど親しくしているものは世界中ここだけであり、まさに世界一といってはばからない景観である。
また青森県は海から育った県と言っているが、まさに三方海に囲まれ、太平洋と日本海を併せ持つ県は、どことどこと問えば、それは青森県のみなのである。
その故であろうか、本県の海岸には十を越える弁天島、弁天崎がある。私は。蕪烏の弁天様をこれらの総代、全国六弁天の一座としてPRしたい思いである。
しかし市民の多くはこのことに気がつかないようである。蕪島の超美人の弁天様を海に投げ込んだという明治新政府の廃仏毀釈がいまだに尾を引いているのではなかろうか。
八戸市民の宝として
以上、三陸海岸の始終点鮫ケ崎、「株上がり」で知られる御利益あらたかな蕪島弁財天、そのお使いのうみねこの世界一の乱舞を八戸市民のみならず世界人類の宝として確認し、三陸海岸国立公園実現への旗揚げの第一歩としたい。 (八戸ペンクラブ会長)