八戸ペンクラブ
The Hachinohe P.E.N. Club

会員投稿 北の縄文遺跡群と世界文化遺産登録

三上秀光

 今年の一月二十七日、東京有楽町朝日ホールで、表記の「登録推進本部」主催による推進フォーラムが開かれ参加した。縄文時代とは日本独自の時代区分で旧石器時代晚期一万五千~六千年前から三千年前に、日本列島に現れ発展した「縄文土器文化」に示される時代のことを言い、以後を弥生時代と呼んでいる。

 北の縄文遺跡群とは北海道から青森・岩手・秋田の3県を中心に、一万五千年前から三千年前にかけて残る多数の縄文遺跡のことだが、フォーラムの冒頭、登録推進本部長の三村申吾青森県知事が、それは「・・・ 世界史上稀有な先史時代の文化であり・・・人類共通の宝として未来へ伝えていきたい遺跡」と、挨拶した。

 日本では、一昨年の平泉仏教建築を含め姫路城、法隆寺・京都・奈良の文化財、岩見銀山跡など12ヵ所が既に世界文化遺産として登録されていたが、今年6月に、三保松原を含めた富士山が追加登録された。

 フォーラムでは大型映写スクリーンを使い、北海道は函館市の九千年前の垣ノ島遺跡等6件、青森県は一万三千年前の外ヶ浜町太平山元遺跡等9件、秋田県は四千年前の鹿角市大湯環状列石等2件、岩手県は五千年前の一戸町御所野遺跡、計18 遺跡が、平成27年度中の登録を目指す候補として、古い遺跡順に研究者らによって紹介された。青森県の9 件には、三内丸山(六千年前)、亀ヶ岡(三千年前)、二ツ森(六千年前) は勿論、八戸の長七谷地貝塚(九千年前)、と是川(三千年前)、とが含まれ青森県は将に縄文文化遺跡の宝庫の観があった。

 ヒトは原人時代から火を使い、石や木、動物の骨や牙を道具に使うことを覚え、旧人から新人の数十万年の旧石器時代を経て道具を造り使うことも覚えたが、食料探しに明け暮れ移動する毎日だったろう。ヒトは日本列島にも旧石器時代、二度に亘って北と南から動物と共に渡来した事が、各地の石器の研究で二つの異質系があることからわかったという。

 (私の住まいである東京都小平市回田町から300㍍ばかりに「小平市鈴木町石器遺跡」があり、三万年~ 一万年前の石器が多数出土、日本各地の出土の石器と比較追跡と研究の結果、二つの異なる石器が出土したと、教えられた)

 縄文草創期に入り、食料の狩猟・ 採集の生産活動、土器などの製作、 寝食場所の構築などで、生活自然環境を認識はじめたヒトは自然と対話し、ヒト相互の依存と連携・協働から定住、やがて感情・精神活動の共有へと進んだのだろう。狩猟・採集の協働は用具の発展と生産を高め、家族→むれ→集落の形成となった。装飾土器や漆塗り生活用具、装身具、土偶、共同墓地の立派な副葬品などの出土から、縄文人の社会生活と精神生活が高度に発達し、「階層差」はあったが所謂階級社会では無かったと報告された。

 太平山元遺跡(青森・一万三千年前)は石器時代から縄文時代への移行の手がかりを残し、長七谷地遺跡(青森・九千年前)は魚、鳥、獣の骨や釣り針・銛などから生業や食生活の情報を得られるし、二ツ森遺跡(青森・六千年前)では埋葬されたイヌから動物の家畜化を知る事ができ、入江高砂遺跡(北海道・六千年前)の多数の人骨から肢体や生活を知る事ができる。また、鏃で傷ついた人骨から「争」があったことが想像される。日本最大級の三内丸山遺跡(青森・六千年前)では大集落が一千五百年以上続き、竪穴住居群、食料貯蔵穴、墓地列、道路からゴミ捨場まで計画的に配置され、植物(栗)も栽培されたことがわかるなど、縄文文化を総合的に知るうえで極めて重要という。

 さらに、四千年前の伊勢堂袋遺跡・ 大湯環状列石(秋田)・小牧野遺跡(青森)の環状列石は、当時の精神生活や祭祀を示すものという。

 フォーラムの最後に亀ヶ岡と是川遺跡は赤漆や巧妙な縄文模様を施した装飾土器類、ヒスイ製玉類や木工などの工芸遺物、土偶などから当時の縄文人の高度な技術と美意識を知る事ができる遺跡だと紹介された。

 私は昨年六月に是川縄文館を訪ね、 国宝の合掌土偶や九百点を超えるという重要文化財を見学。また、八戸には485箇所もの遺跡がある事を聞き驚嘆したが、フォーラムに参加して、その思いを新たにした。

 黒曜石石器やヒスイ玉などの産地が特定でき、縄文人は日本列島を広く往来し、交易・物流もうかがいを知る事が出来るというが、自然の障害をどのように克服往来したのだろう。社会組織は遺物として残らないが『互恵・平等の氏族共同社会』からどのように変遷したものだろうか。

 旧石器時代、二度に亘り二方向から渡米した旧石器人は私達の祖先だろうが、各地の縄文人および現代人と繋がりはどうなのか。縄文遺跡はその繋がりの環と思うがその研究は日本列島人類史の解明でもある。思うだけで先史時代へのロマンの夢は尽きない。

 世界遺産登録推進運動を応援したい。