「ハヤネハヤオキアサゴハン」ウンドウ─ハチノヘシオヨビキンリンシチョウソンノジッタイ─

「早寝早起き朝ごはん」運動─ 八戸市および近隣市町村の実態 ─

著者:佐藤 千恵子

「国民が生涯にわたって健全な心身を培い、 豊かな人間性をはぐくむ」ことを目的として、 平成 17 年 6 月に食育基本法が制定された。 それを踏まえて平成 18 年 3 月には同法に基 づく食育推進基本計画(平成 18 年度から平 成 22 年度まで)を策定し「国は 5 年にわた り都道府県、市町村、関係機関、団体等多様 な主体と共に食育を推進してきた。その結果 すべての都道府県における食育は着実に推進 されてきている」というのが国の評価であ る。が、一方で生活習慣の乱れからくる糖尿 病等の生活習慣病有病者の増加、子どもの朝 食欠食、家族とのコミュニケーションなしに 一人で食事をとる、いわゆる「孤食」が依然 として見受けられること、あるいは高齢者の 栄養不足等、食をめぐる諸課題への対応の必 要性はむしろ増しているとも述べている。 そして今後の食育の推進にあたっては、単な る周知にとどまらず、国民が「食料の生産か ら消費に至るまでの食に関する様々な体験活 動を行うとともに、自ら食育の推進のための 活動を実践することにより、食に関する理解 を深めること」(食育基本法第 6 条)を旨と して、生涯にわたって間断なく食育を推進す る「生涯食育社会」の構築を目指すとともに、 食をめぐる諸課題の解決に資するように推進 していくことが必要であるとし、これまで の食育の推進の成果と食をめぐる諸課題を踏 まえ、食育に関する施策を総合的かつ計画的 に推進するため、平成 23 年度から平成 27 年 度までの 5 年間を期間とする新たな食育推進 計画を策定することでこの期間を第 2 次食 育推進計画として設定し、食育推進計画は継 続されることになった。 また国民健康・栄養調査結果1)(平成 21 年 度)によれば習慣的に朝食を食べない人は男 女ともに 20 歳代(男性 21.0%、女性 14.3%) が最も多く、ついで 30 歳代(男性 21.4%、女 性 10.6%)の順になっている。さらに興味 深い点は習慣的に朝食を摂らない人のうち、 その習慣が「小学校」または「中学・高校」 の頃から始まった人は、男性 32.7%、女性 八戸短期大学研究紀要 第 35 号 39~52 頁(2012) 40 八戸短期大学研究紀要 第 35 号 25.2%という結果である。子どもの頃から の食習慣形成がいかに大事であるかというこ とを、改めて周知させてくれたのではないだ ろうか。もとより「早寝早起き朝ごはん」運 動3)は文部科学省が「基本的生活習慣の乱れ」 に警鐘を鳴らし、子どもたちが健やかに成長 していくためには適切な運動、調和のとれた 食事、十分な休養・睡眠が大切であり、子ど もがこうした生活習慣を身につけていくため には「家庭の果たすべき役割は大きい」と提 言し、この基本的生活習慣を改善するべくこ とを課題に「社会全体の問題として地域によ る、一丸となった取り組み」として平成 18 年にスタートさせた国民運動3)であり、今や 「早寝早起き朝ごはん」運動は地域によって は標語になっているところさえある。具体的 な食育の推進に当たっての目標としては生活 習慣の形成途上にある子ども(小学生)につ いては、平成 12 年度の 4% から 19 年度に 1.6% となっている「欠食」の割合を、27 年度ま でに 0% とすることを目指すとし、成人の中 でも特に問題が顕在化している 20 歳代及び 30 歳代の男性については、平成 20 年度に 28.7% となっている割合を、27 年度までに 15% 以下とすることを目指すとしている。 さらにこの第 2 次食育推進計画には「家庭 における共食」を重点課題とした基本的な取 り組みも盛り込まれてあり、その背景とし て子どもだけで食事をする「孤食」が当たり 前になり、結果「偏食」「肥満」「生活習慣病」 等の予備軍を構成している現状を認識しなけ ればならない。国の提言の項にも子どものこ ろに身についた食習慣を大人になって改める ことは困難であり、子どものうちに健全な食 生活を確立することは、成長段階にある子ど もが、必要な栄養を摂取し健やかな体を作り、 生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人 間性を育んでいく基礎となる。このため、日 常生活の基盤である家庭において、子どもへ の食育の取り組みを確実に推進していくこと は重要な課題であるとし、「共食」こそ「食育」 の原点であり、それを推進することで食卓を 囲む家族の団らんによる食の楽しさを実感さ せるとともに、食事のマナーや挨拶習慣など の習得ができることを明言しながらももとよ り、ライフスタイル、家庭の態様や家族関係 は多様化しており、家庭における食育は一律 には推進できないが、家庭が子どもへの食育 の基礎を形成する場であることは否めない、 と公言している事は注目すべき点である。 そこで実際に今まで「食育」を題材とした 講演等で収集したデータから、私たちが暮ら す八戸市および近隣市町村における小 ・ 中学 生の「朝食の欠食」についてスポットを当て て現状を理解すると共に、地方の子ども達の 「欠食」状況やその生活習慣の背景等につい て把握し、今後の方向性を見出すことを目的 とする。

掲載元情報八戸短期大学研究紀要第35巻(2012)pp.39-52
カテゴリー医療・福祉,地域分析,活動・製作,教育,食(文化、産業)
発行年月日2012/10/31
閲覧先八戸学院学術情報リポジトリ
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