ハチノへチホウニオケルミズノデンセツ_マブチガワ・ニイダガワニソッテ
八戸地方における水の伝説分類―馬渕川・新井田川にそって
著者:大下 由宮子
青森県八戸市の水道源となる流れにそって、現存の場に伝わる古伝承を採集し、話型の分類を試みた。ここに古来から私たち人間が、水というものに託してきた諸観念をみたいと思ったのである。 実際の採集にあたり実感した事は、伝説とは伝わるその場によって固有名詞は異っていても内容の類似したものが方々にある事と、伝説というものは実態が失われた後にこそ美しく咲き出す花のようなものだという事であった。例えば、葛巻の奥の村に入って井戸のかたわらにある高い桂の木を見ると、「古事記」の中で若い神が訪れる海底の宮井のほとりの聖なる香木が思い出される。また、新井田川畔、大鳥の滝では水中に布を織る乙女の姿と聞けば天の河の織姫との関連が考えられる。そして、八戸市内で「もっと上流の水の清い所で…」と言われる話を、川にそってたどってみるとそれぞれに「もっと上流の…」と言って結局は実在の地名がない結果になってしまったりする。そして真実、水の清い上流の地では伝説そのものが存在しないのである。
掲載元情報 | 研究会会誌 第4号(1980) pp.59-66 |
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カテゴリー | 歴史(近代・現代),方言・地名,地域分析 |
発行年月日 | 1980/3 |
閲覧先 | 八戸工業大学学術リポジトリ |
閲覧先での公開範囲 | 非公開 |