はちのへ未来ネット 八戸の子育て支援
特定非営利活動法人 はちのへ未来ネット こどもはっち 代表理事 平間 恵美さん
1 取り組みの背景と主旨
八戸は人口22万の中核都市。中学校学区に一館ある公民館が地域のプラットホームとなり、昔から社会教育理念が土壌にあり、地域の子どもは地域で見守るという気質が古くから受け継がれている。現在こどもを取りまく環境が早いスパンで変化し、それに伴う値観の多様化は、地方の市町村でも同様の課題で、子どもが個々の力を主体的に発揮し、安心できる居場所づくりは大人の役目である。私たちも福祉や教育の垣根を越えて、必要な時に必要なもの同士が助け合いながら活動し、行政ではなかなか越えられない壁を現場でつなぎ、一つの団体や個人ではできなかったことを皆で実現しようという思いから、平成22年度から八戸市より「こどもはっち」子育て支援の広場を受託運営し、新たな取り組みを提案実行すると共に、参加する多くの子ども、親はもちろんのこと支援者、市民、高校生ボランティアなどを巻き込み、多くの支える力・支援する力が一つとなって学びや育ちについての細やかな支援活動を行っている。
こどもはっちでは、母親・親子・父親のサークル活動や季節行事、各種体験事業、学習会や講習会などを実施、また出産に伴い外に働きに出られない母親を対象としたママ達の就業支援おもちゃハウス「くれよん」の運営、高校生を対象とした社会体験活動の場「どりーむキャンバス」事業、不登校やひきこもりを対象とした相談事業や学習支援、貧困家庭の支援を視野に入れた「パクパクルーム」の開催や食材を提供する宅食支援を行い、支援家庭を早期発掘し、地域とのつながりを啓発している。また、八戸の特色とういうべき、各地域で行っている子育てサロンや広場への支援に加え、公民館の家庭教育学級と協力し、心のケアや育ちにも力を注いでいる。
子育て支援策としては、育児休暇中という短期間に他のお母さんとの交流の重要性を認識してもらうため、月齢に応じた子育てサークル「どんぐり」や「にこにこ」の開催、また、双子育児をしている他のお母さんとの交流と同じ悩みを相談できる場づくりのため、双子を持つ親子を対象とした子育てサークル「双子」も月1回開催している。もちつき、ハロウィン、クリスマスなどの季節行事、夏まつり、お茶会、親子遠足などの体験事業では「はっち」の事業に参加することが初めての社会参加となる親が多く、人との新たなつながりも形成されている。
ママ達の就業支援おもちゃハウス「くれよん」では、現役、OB、OGママの手作りおもちゃ企画、制作、販売を行っている。その収益を子どもの為の文化活動や子育て支援活動に還元することで、母親の社会参加の一助となっている。
不登校、ひきこもりの当事者やその家族を対象とした、月1回の交流会と日曜に開催している、居場所作りや学習会、パクパクルームでは、悩みを一人で抱えこまないよう学校不適応の正しい理解を促すと共に、生活面も含めひとりひとりにあった支援を行っている。
2 取り組みの成果
「はちのへ未来ネット」の連携の輪が各地域と密接につながり、支援活動している人材との生きた「人的ネットワーク形成」が構築された。親子が住む地域の方々と連携して活動してきたことで、八戸市の各地域のサロンや広場、公民館における子育て支援の活性化と親子が安心して生活できる地域づくりにもつながっている。
3 八戸の課題及び今後の方向性
八戸市は、昔から公民館を中核とした社会教育理念が土壌にあり、地域の子どもは地域で見守るという気質が古くから受け継がれているまちである。現在は、子どもが減っても支援の手はますます不足しているが、先人の思いを受け継ぎ、手をつなぎ地域の子どもたちを分けることなく、福祉と教育の垣根を越えて見守りたいと思っている。
未来ネットは、ネットワークの力で「子どもと親の【育ち】を応援する」をミッションとして事業を行っている。子どもが安心して成長できる居場所、個々の力を主体的に発揮できる居場所の環境を整え、学びや遊びを保障するのは大人の役目である。現状は、子どもの数が減少しても、支援者の手は不足し、だからこそ人と人がつながり常に子どもの目線に立って、誰ひとり取り残さない社会実現を目指し、活動できるNPOでありたいと思う。
2023年2月掲載